野球賭博に関しての議論がネットに渦巻いてますね。
やれ、巨人への制裁はどうだ。5人目は?B氏とは?他球団は?などなど
これは高木京介投手が、先に野球賭博に関わっていたとして処分された、笠原将生氏、福田聡志氏、松本竜也氏に続いて4人目の野球賭博に関与していたことが報道されたことに端を発します。
開幕前のこのタイミングでの報道。野球ファンにとって、この開幕前の時期はどの球団ファンにとっても期待を胸に膨らましているまさにこの時に野球賭博の問題再燃です。そりゃ意気消沈しますよ。
僕も、いちプロ野球ファン(広島カープファン)として残念です。
で、今さら個人や球団のことを言っても仕方がないので、野球選手にとって野球賭博がなぜ悪いか考えてみました。
野球選手にとって野球賭博はなぜ悪い
甲子園が始まると、野球好きが集まってどこの高校が優勝するかが賭けの対象になります。サッカー好きならワールドカップなんかも良くありますね。ゴルフに行ったら仲間同士でニギリ(スコアやその他で賭けること)をするし、麻雀では千点10円などで賭ける。
厳密にいうと違法ですが、個人で楽しんでいる分には、よほど高額な掛け金で生活破綻者でも出ない限りは警察沙汰になることはありません。あっても厳重注意くらいでしょう。
一般人ではそこまで大きな問題にならない賭博(ギャンブル)。ではなぜ野球選手にとって野球賭博は禁忌(タブー)なのでしょうか。
野球協約に違反するから
プロ野球選手と一般の会社の従業員さんとの違いは、雇用契約に基づく雇われか個人事業主(選手)との選手契約かで違います。選手それぞれが個人事業主なので、労働基準法などが適用されない上に就業規則はありません。その代り、野球協約があります。
NPBに所属するプロ野球の選手および球団は、NPBが定める野球協約を守る義務があります。
特に野球賭博の禁止については、野球協約第180条に記載されています。
第180条 (賭博行為の禁止及び暴力団員等との交際禁止) 1 選手、監督、コーチ、又は球団、この組織の役職員その他この組織に属する個人が、次の行為をした場合、コミッショナーは、該当する者を1年間の失格処分、又は無期の失格処分とする。 (1)野球賭博常習者と交際し、又は行動を共にし、これらの者との間で、金品の授受、饗応、その他いっさいの利益を収受し若しくは供与し、要求し、申込み又は約束すること。 (2)所属球団が直接関与しない試合、又は出場しない試合について賭けをすること。 (3)暴力団、あるいは暴力団と関係が認められる団体の構成員又は関係者、その他の反社会的勢力(以下「暴力団員等」という。)と交際し、又は行動を共にし、これらの者との間で、金品の授受、饗応、その他いっさいの利益を収受又は供与し、要求又は申込み、約束すること。 2 前項の規定により無期の失格処分を受けた者(後に期限が定められた者を除く。)であっても処分後5年を経過した者でその間において善行を保持し、改悛の情顕著な者については、本人の申し出により、コミッショナーにおいて将来に向かってその処分を解くことができる。 3 前項の規定により処分を解かれた者が、選手として復帰を希望するときは、第177条第3項の規定を準用する。
引用元: 日本プロフェッショナル野球協約2015(リンク先はPDF) http://jpbpa.net/up_pdf/1427937913-568337.pdf
以上のように、明確に禁止がうたわれている上に、違反した場合の処分についても明記されています。
ちなみに野球協約は日本プロ野球選手会の公式webサイトから誰でも無料でダウンロードできます。
日本プロ野球選手会 野球協約・統一契約書 http://jpbpa.net/system/contract.html
ということで、野球協約違反だから、野球選手は野球賭博に関与したら悪いということになります。
黒い霧事件の反省
ではなぜ、野球賭博だけかなり具体的な記述になっているのでしょうか。
それは過去に「黒い霧事件」と呼ばれる野球賭博での八百長事件があったからです。
「黒い霧事件」の詳しい説明は割愛しますが、簡単に言うと・・・
西鉄ライオンズの永易将之氏を発端に、他球団の選手を含めて反社会的勢力(暴力団)の野球賭博への関与に加え、八百長まで行ったとされる一連の事件のことです。
この「黒い霧事件」では、7球団19人の選手が処分されました。
とくに有名な選手として、当時阪神だった江夏豊氏も、野球賭博疑惑のある暴力団と交流があったとして戒告処分を受けています。
当時、国民的スポーツだったプロ野球の大規模な事件として、野球ファンのみならず国民全体が注目する大事件となりました。
この「黒い霧事件」の反省を踏まえ、上で引用した具体的な野球協約180条がつくられたわけですが、キーワードは2つ挙げられます。
- 八百長
- 反社会的勢力(暴力団)
それぞれみてみましょう。
八百長について
プロ野球のお客さんの大多数は各球団のファンです。
僕は大の広島カープファン。当然、カープに勝ってほしいと思って試合を観戦します。「俺はカープファンだけど負けてくれた方が嬉しい!」なんて人は普通いないでしょう。
ビジネスとしては、お客さんのファンである球団が勝つかもしれないという期待感を売っています。お客さんのファンである選手が活躍するかもしれないという期待感を売っています。
期待感があるから、勝つか負けるか分からない試合を見に行くし、今年活躍するかどうかわからない選手のグッズを買うんです。
ファンの球団が勝つ、好きな選手が活躍すると期待させることが、プロ野球全体の商売につながっているんです。
そんなお客さんにとって、死力を尽くしての敗戦ならまだしも、自分の利益のためにわざと試合に負けるという八百長は許されるものではありません。
そういう事実が発覚すると、ファンは興ざめして離れていき、プロ野球という商売全体が成り立たなくなります。
だから、一球団の一選手が八百長しただけでも問題になるんですね。
反社会的勢力(暴力団)について
まぁ普通に考えても反社会的勢力(暴力団)との関係があったらダメだろうってなもんですが、「野球賭博」と「八百長」について少し掘り下げてみます。
野球選手にとって八百長が悪い理由は上で書いた通りですが、野球ファン以外も含めて社会全体にとってプロ野球選手の八百長が悪い理由があります。
それが、野球選手が八百長をすることによって、反社会勢力(暴力団)に資金が流れるからです。
簡単に言うと、ヤクザが儲かるんですね。
八百長をするとヤクザが儲かる仕組み
反社会的勢力(暴力団)がひらく野球賭博には、当たり前ですが野球選手以外の多くの一般人が賭けています。もちろん、強い球団や弱い球団があるので、賭ける人が対等に見えるように絶妙なレートが設定されます。
もちろん、レートには場代も含んでいるため、胴元である反社会的勢力(暴力団)は総額でどれだけ賭け金を集められるかで利益が変わります。賭け事はなんでもそうですが、基本、ある一定額以上集めて回数をこなせば、胴元は確実に儲かります。儲けを最大限にするためには、いかに長期的に賭場でお客さんに賭け続けてもらうかが重要。生かさず殺さずです。
ところが、絶妙なレート設定で勝ち負けが対等に見えても、どちらかの球団に賭けが偏るケースもあるでしょう。そんな場合に、八百長です。
また、野球賭博のお客さんに情報を売るっていう方法もありますね。「あの勝利の方程式(勝ってる時に投げるリリーフ投手)に入っているA投手は、実は調子が悪いらしい。必ず打たれる。」とかなんとか。そして八百長させて事実そうなる。すると、毎回八百長させなくても、最初に強烈な印象を持たせばその後もいいカモになるって寸法です。
どちらにしても、反社会的勢力(暴力団)の有効な資金源となります。
以上、野球賭博と八百長がなぜ悪いかでした。