あるお掃除屋のつぶやき

四国のお掃除屋を営む経営者が日々の気になるニュースやお役立ち情報などをつぶやきます。

あれから1年。平成30年7月豪雨を振り返って今感じること

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昨年7月7日発災した平成30年7月豪雨災害。西日本を中心に、甚大な被害が出ました。

まずは、豪雨災害でお亡くなりになった方のご冥福をお祈りするとともに、未だ不便な生活をしていらっしゃる方の一日でも早い復旧と復興に、僕も微力を尽くしていきたいと考えております。

僕も豪雨災害で被害のあった四国に住んでいます。

四国の中では特に被害が大きかった、愛媛県の西予市や大洲市。僕の友人が多かった大洲市には発災後に2回ほどですがボランティアに赴きました。僕の友人が、自分も被災している中、僕らのようなボランティアの受入、大洲市や社会福祉協議会と連携して住民のニーズを拾っている姿に心を打たれたのを思い出します。

天災を人が完全に制御するのは難しいですが、それでも平時の時に発災時の対策やいち早い復旧策など、考えられることはあるはずです。

今回は、自分が行ったボランティアやお掃除屋として復旧作業に携わる中で感じたことをまとめてみたいと思います。

ボランティアの体験談とそこから感じた課題や問題

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平成30年7月豪雨災害から1年が経過して、改めて豪雨災害について思い返しました。

実際にボランティアで僕が作業を行ったのは以下の通りです。

  • 愛媛県大洲市 3日間
  • 僕が住んでいるまち 2日間

また、災害復旧の業務委託としてお掃除と消毒の業務を請け負ったのが、大洲市内の市立の幼稚園や小学校の、のべ3施設ありました。

この他、寄付金も会社と個人の両方で行いました。また、大学の部活の先輩が岡山の真備町に在住なので、復旧のお手伝いは出来ませんでしたが、寄付を行い、現状を多少ですが聞きました。

これらの体験から僕が感じたことを書いてみたいと思います。

高速道路の大洲ICが大渋滞に

大洲までの高速道路が復旧したということで、すぐに大洲市に向かったのですが、大洲市内に一番近い「大洲IC」が大渋滞になっていました。

車が少しずつしか動かない状態で、通常なら10分くらいで到着する距離で、1時間30分以上かかりました。大洲の待ち合わせの時間に30分の余裕をみて出発したにもかかわらず、予想外の大渋滞で1時間の遅刻。先方にも迷惑を掛けてしまいました。

大渋滞の理由は、大洲ICのETCレーンの機器類やETCカード・クレジットカード等を処理する機器類が、肱川の氾濫によって水に浸かってしまい故障したからでした。

ほとんどの車がETCレーンで入場しているので、どのICから入場したのかをヒアリングし、手元のクレジットカード精算端末で1台1台処理しているために時間がかかったそうです。

我々、民間の車はまだ良いのですが、問題は復旧支援のために派遣された自衛隊の車両まで立ち往生してしまっていたことです。

四国の高速道路は1車線の部分も多く、松山=大洲までの道路はほとんどの区間で1車線です。自衛隊の横幅の大きい車両では、我々を追い抜くことが出来ません。自衛隊の車両もムダな1時間以上を過ごしたことでしょう。

高速道路だと、まだ整備された道です。これが山間部の町ではもっと整備されていない道もあり、土砂崩れなどで通れない道も復旧させないと救助にもいけませんし救援物資を届けることも出来ません。

改めて、災害時に向けた、交通インフラの整備が必要だなと感じました。

水がないと作業もできない

次に、水の重要性です。

正直、飲み水は3日ほどの備蓄があれば、救援物資や自治体の備蓄でなんとか生き延びることができると言われています。

問題は、掃除用の水や生活用水です。

河川が氾濫し大洪水になった場合、不衛生な泥が屋内外に残るのですが、それを洗い流す水がなく、非常に不便でした。

大洲市では、水道の復旧は数週間かかりました。松山市では、被災した場所だけ部分断水しており、何度も水タンクを積んだトラックが往復して泥を洗い流しました。

水害なのに、水がなくて苦労するのは、なんとも皮肉な話です。でも、衛生的な水が蛇口をひねると出てくる今の日本において、水をどのように確保しておくかは平時から考えなくてはならないと感じました。お風呂の残り湯を貯めておくことは有効ですが、1階に浴室があると浸水し、不衛生な水に変わる可能性があります。

大規模災害でもない限り、少し車で遠出すると水道が出る地域はあります。水を貯めるための10リットルクラスのタンクを2~3個、用意しておいて損はないでしょう。

ちなみに、発災時は夏場だったので、すぐにポリタンクを購入しにいっても在庫が少ない状況でした。ポリタンクの需要は冬場、灯油を入れる用途で大きくなるからです。平時からの備えは必要ですね。

あと、ボランティアで赴いたとき、軽トラックに水をためる大きなタンク(1,000リットル以上の大容量タンク)を積み、高圧洗浄機で洗い流すと喜ばれました。災害時に備え、僕らのようなお掃除屋は、大容量タンクをいくつか用意しておくのも大切だなと感じました。

水害は乾燥・消毒が大切

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夏場の水は腐ります。それは、水害として氾濫した水でも同じで、特に雑菌を含む泥をまき散らす床下・床上浸水になると、一刻も早い乾燥・消毒が必要です。そのために、1階のモノを全て外に出し、床板を剥がし、石灰をまくなどして処理をするわけです。

でも、考えてみて下さい。今まで生活していた自分の家です。水に浸かった家具や家電を外に出し、素人目にはまだ使えるように見える床を剥がしていくのは、他人の僕でも心が痛みます。家は、単に雨露を防ぐものではなく、家族の歩んできた歴史そのもの。思い出の場所が無残にも壊されていくのは、耐えがたいものがあると感じます。

それでも、処理を放っておくと、柱が腐ったりシロアリにやられたりと、もっと甚大な被害に発展することになります。僕たちボランティアは、運び出される生活の一部を呆然とみつめる家主を尻目に、無情にも処理をしなければなりません。本当に心が苦しいです。

そんな僕らボランティアに、「ありがとうございます。これでも飲んで休憩して下さいね」っと、ジュースなどを出してくれる家主さん。今ではなんとか復旧はしたという話を聞きました。まだ不便な状況でしょうが、元気に暮らして欲しいと願っています。

さて、乾燥・消毒をさせていただいた家や職場は良いのですが、処理されずに残ってしまう家があります。空き家です。

長期間、管理されていない空き家は、それだけでねずみ・害虫等の温床になりやすいです。そこへ床上浸水などが発生すれば、一気に異臭が周辺にまき散らされます。臭いなどと生やさしいものではなく、風下だと20m以上離れた場所を横切っただけで目が痛くなり、刺激臭がしました。

後でも述べますが、ニーズがないところにボランティアは派遣できません。

空き家の場合、管理者が誰かを特定することも難しいですし、その地域から離れたところに住んでいる人が所有している場合もあり、当事者感覚が薄い場合があります。処理されずに放置しておくのは、本当に迷惑です。

もし、あなたの周りに管理されていない空き家をお持ちの方がいらっしゃれば、管理会社を入れるなり、売却・譲渡するなりしてもらうよう、お話し下さいね。

ニーズがないところにはボランティアがいけない

先ほども少し触れましたが、ニーズがないところには社会福祉協議会が管理するボランティアセンターのボランティアが行けないことになっています。

まぁ自分の財産(家具など)を勝手に外に出したりするわけです。自力で処理できるご家庭もあるでしょう。そんなところに頼まれもしないのに、他人が押しかけて、勝手に処理するのは不法侵入と言われても仕方ないです。考えてみれば当たり前の話ですね。

でも、独居老人など困っているのに「ニーズ(ボランティアの要望)を出す」という行為自体を知らない人も多いと思います。

町内会がしっかりしている地域や人口の少ないところなどは、一軒一軒、ニーズを確認することが可能ですが、都市部ではなかなかニーズの拾い出しが難しいのではないかと思います。

実際、僕が住んでいるまちの社会福祉協議会では、土砂で埋もれた家屋がある地域の情報が、発災して1日以上経って入ってきたそうです。幸い、その地域は町内会が機能していて、助け合いでどうにかなったそうですが、町内会の関係が希薄な地域は、本当に大丈夫かと思いました。

よく、「自助・公助・共助」という言葉が使われますが、公助だけでは間に合わないんだなっと感じます。

豪雨や台風による水害だけではなく、震災や津波など、様々な災害に対し、平時の備えとしてモノの備蓄だけではなく、被災した時の対処方法などを把握しておく必要がありますね。

また、地域のコミュニティも、平時では少々面倒なお付き合いでも、緊急時はとても大切な繋がりになります。日ごろからご近所さんとは挨拶くらいの軽いお付き合いでも良いので、繋がりを持っておくにこしたことはないと思います。

物資は届いているのに配れない

これは、東日本大震災でも感じたことです。

豪雨災害時に「まちに水が足りません。送って下さい!」といった切実な声がSNSで流れました。その声に反応し、大量の水や支援物資が市町村に届きました。

ところが、その支援物資をすぐに住民に配れないんです。

理由は、平等に分けられないから。

全国から送られてくる支援物資で山盛りの体育館。その支援物資がいつまで経っても配られない様を指をくわえて見ているだけなのは、ものすごく歯がゆく思いました。もちろん、指をくわえて見ているだけではなく、市の職員さんに「本当に必要な人に配りたい!」と怒鳴り込んだ仲間もいました。でも、配れないんです。

これは市の職員さんが融通のきかない頑固者というわけではありません。公的サービスは元々そうしたものです。じゃないと、選別して渡す場合、「本当に必要な人」の基準をどうするのか、なぜ偏りがあるのかを問われたときに答えられないからです。

では、支援物資を名指し(個人宛)で送たらいいんじゃないかって話になります。確かに受け取る側が確定するので他の人に配るという手間はなくなります。でも、送られた側がご近所さんから妬まれることもあるでしょう。ご近所さんに配るっていっても、どこまで配るか、という面倒な問題も発生します。まぁそれでも自治体に送るよりはマシだとは思いますけどね。

結局、個人的な支援は、知人が被災者でもない限り、物資を送るよりも信頼できるところへの寄付が一番かなと思います。

迷惑な自称ボランティア

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被災地がどういう状況か見に行こう!といった、物見遊山で被災地を訪れる自称ボランティアの人がいます。もちろん、復旧支援のお手伝いをするのであれば良いのですが、何の準備もなくただ来ただけで、迷惑を掛ける人もいます。

例えば、食事。現地のコンビニでも行って買えば良いくらいに思っている人もいますが、地域によってはコンビニも全滅しているところがあります。もちろん、飲食店はやっていません。すると、本来、被災者のためにある炊き出しを「ボランティアだから」という言い訳で食べていたりするわけです。

また、ガソリン。車で行くのは良いですが、被災地にとってガソリンは貴重です。どこかにガソリンスタンドがあるだろうって軽い気持ちで行って、ガス欠になり、被災地の人から分けてもらうっていう人もいたそうです。

そして、写真。被災地の状況を伝えようとして、被災者に許可も得ず民家の中や運び出された家具などをパシャパシャ写真に撮り、SNSにアップする人もいます。被災してショックを受けている方に対して、追い打ちをかける仕打ちです。プライバシーも何もあったもんじゃないですよね。

この迷惑な自称ボランティアですが、厄介なことに、本人は善意だったりするんです。被災地に心を寄せ、なんか自分でもできることはあるんじゃないかと会社も休み、自費で被災地に訪れるわけです。それだけに難しい問題ですね。

人手不足は有事の際に助けに行く余力がない

最後はウチの社内的な問題です。

うちはお掃除の会社なので、こういう災害時によく依頼がきます。もちろん、できうる限り依頼はこなしますし、無償でのボランティア派遣もやぶさかではありません。

でも、人手不足で長期的で継続的な支援は難しいのが実情です。

また、ウチはゴミの収集運搬もしているのですが、災害時にトラックの派遣の要請もあります。けれど、人員不足のため、正直、被災地への派遣が難しいです。もし、無理矢理にでも派遣すると、経費がかかって赤字になるという懸念よりも、既存のお客さんの業務が回らなくなり迷惑を掛けてしまうという恐れが強いです。それではさすがに、行政から依頼があっても簡単にはGOと言えません。

これって、まだまだ働き盛りの世代が多かった時代は、苦もなく派遣できていたと思います。それこそ、損得抜きで支え合いだって言えたと思います。けど、現状は人手不足。通常の業務ですら、人手不足をなんとかやりくりしている中で、災害時のボランティアに対して継続的に人員を回すのは難しいと感じます。

特に、官公庁の施設のお掃除など、経費がほぼ人件費なのに、安値で入札してくるダンピング業者のせいで、利益率はものすごく悪化してます。最低賃金の上昇もあるなか、価格交渉力に乏しい弱小企業は厳しい時代だと感じてます。

経営者の役員報酬を上げるためではなく、地域に根ざした会社は、不測の事態に備え少しばかり余裕をもった人員配置が出来るようにしていくのも経営者の器量なんだと感じました。

お客さんに付加価値を感じていただき、利幅を得ながら、労働環境を整え、ギリギリの人員配置ではなく、少しだけ余裕を持った対応ができるよう、頭をひねりながら経営しなければと改めて思います。

改めて、多くの人財を抱える経営者の責任の重さを感じる1日でした。

まとめ

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ここまで偉そうに、豪雨災害の振り返りと感じたことを述べさせていただきました。

今、切実に思うことは、「自助・公助・共助」のバランスなんだと思います。

四国地域では、最近被害の増えている豪雨災害の他、南海トラフに由来する大震災の恐怖におびえています。特に、僕の住んでいる地域は災害が少ない地域で、年間でも地震は震度3くらいが1~2度あるかないかなので、正直、災害への備えや意識は低いと言わざるを得ません。

自分の身は自分で守る。

自分の手の届く範囲は助け合う。

こんな優しいコミュニティの輪が今後ますます重要になってきます。

僕も地域に根ざしたお掃除屋の経営者として、自社の発展とともに、地域の有事の際の備えを含め改めて考える機会となりました。

今お読みのあなたにとって、本記事が一つでも考えるきっかけになれば幸いです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。