吉本興業と闇営業で反社会的勢力からの金銭授受があったというお笑い芸人との問題がエンタメ化していますね。
元々、雨上がり決死隊の宮迫博之さんやロンドンブーツ1号2号の田村亮さんら、お笑い芸人が反社会的勢力から金銭授受があり、マネジメント契約を結んでいるはずの吉本興業に報告をしていなかったことが問題であったはず。
それが、いつの間にか吉本興業が悪いというような論調になっていますね。
記事にしといてなんですが、そのあたり(誰が悪いか等)は僕はあまり興味はないです。あえて言うなら、振り込め詐欺集団が悪いです。
問題は、世の中の論調に
- 宮迫を解雇しろ!
- 売れていない芸人の給料が安いのが問題だ!
などという意見がありますが、これは明らかな間違いです。
なぜ間違いなのかというと、芸人さんと吉本興業との関係は、雇用契約で結ばれた従業員ではなく、マネジメント契約(委任契約)で結ばれたクライアントだからです。芸人さん自身は個人事業主なんですね。
では、マネジメント契約って何なのか。そして、吉本興業と所属芸人とのマネジメント契約の問題点は何だったのか。今回はマネジメント契約について考えてみました。
マネジメント契約とは
マネジメント契約とは、会社と個人間で交わされる委任契約です。
通常、芸能人や芸人は個人事業主であり、どこかの会社に雇われているわけではありません。労働者ではないので、労働基準法は適用されないことになります。
ただ、どんなにその個人の芸が優れていても、どこにも所属していないのであれば、芸事だけに集中することは出来ません。自分のプロモーションから契約手続き、ギャランティの収入管理から税務申告まで自分の手で行う必要があります。自分の写真を勝手に使われたこと(肖像権の侵害)への法的処置や、クレーム対応、面倒なファンへの対応なども全部です。
これはとてもじゃないですが大変です。
そこで、芸事に集中するために、所属事務所とマネジメント契約を交わすんですね。
マネジメント契約の内容
マネジメント契約の内容は
- スケジュール管理
- 出演契約交渉
- 報酬(ギャランティ)の受領と管理
- 移動の手配
- 税務申告
- 著作権や肖像権の管理
- クレーム対応
などなど、これは所属事務所ごとに変わると思いますが、基本的には同じだと思います。具体的な内容には、グッズの開発やブログやメディアの制作やファンレターなどの管理などもあるでしょう。
この中で、スケジュール管理と報酬の管理の面から、所属する芸人や芸能人は会社に雇われているという感覚を持つんだと思います。
マネジメント契約の事務所側の報酬形態
ここでは、マネジメント契約の所属事務所側の報酬の配分ではなく、どのような形態があるかです。あ、ここでの報酬は、事務所側の報酬です。
大きく分けて2つ
- 毎月固定
- 完全出来高制
この他にも、グッズ販売や書籍やCD・DVDなどの印税の分配方法も、マネジメント契約を交わす時に明らかにされることとなります。
吉本興業のマネジメント契約
では、吉本興業のマネジメント契約はどのような形態だったのでしょうか。
吉本興業のギャランティの配分が90%:10%は本当か
よく問題点として上げられるのは報酬面で、吉本興業90%、芸人10%という、吉本興業が超有利なところです。
他の芸能事務所の取り分は平均して40~50%だと言われています。
これだけ違えば、さっさと他の芸能事務所に移籍すれば!って思いますよね。特に明石家さんまさんやダウンタウンのお二人など、めっちゃ稼いでるはずです。
ではなぜ、吉本興業に残り続けるのでしょうか?
成り上がりのギャランティの仕組み
実は吉本興業が90%取るのは、吉本興業が制作している番組や舞台の話で、吉本興業が携わらないTV・ラジオの出演やCM出演、M1などの賞金、書籍などの印税は税金部分を除いて全額本人の収入になるそうです。
考えてみれば、明石家さんまさんの年収は7~8億円ほど。すべてのギャラが90%:10%なら、明石家さんまさんに対する吉本興業が得るギャランティは70~80億ほどある計算になります。
さすがにこれはないですよね。
つまり、吉本興業のギャランティは、下積みの苦しい時代を突破し中堅以上になった時、初めて大きな報酬を得るという仕組みになっているんです。
よく言えば、夢のある仕組み。悪く言えば、売れない下積み時代は激貧に陥ってしまう仕組みです。吉本興業の所属芸人は、敗者と勝者がくっきり分かれる厳しい競争社会なんですね。
吉本興業に所属しているのはお笑い芸人だけではない
余談になりますが、吉本興業に所属しているのはお笑い芸人や新喜劇の団員だけではありません。
それこそ俳優、声優、ミュージシャン、果ては文化人やダンサー、スポーツ選手などが所属(マネジメント契約)しています。
僕はカープファンなのですが、あの黒田博樹さんが吉本興業に所属しているのにはビックリしました。現役・引退した両方のスポーツ選手が所属しているのは、ギャランティの交渉に加え、メディアへの露出や引退後の番組出演なども考えてなのでしょうね。
文化人やスポーツ選手などは、基本的に成功している人が所属しています。あまり吉本興業とのマネジメント契約で問題は表沙汰になりません。
では、お笑い芸人との契約上の問題は何なのでしょうか。
ギャランティの低さは問題ではない
個人事業主として成功を夢見て挑戦するわけですから、正直、ギャランティの低さは吉本興業の落ち度では無いと思います。
下積み時代のギャランティの低さが、闇営業に走りやすい。だから吉本興業は見直せ!って言う人もいます。
でも、そうすると現在成功している人からも多額のマネジメント報酬をもらわざるを得ません。これでは吉本興業に所属している大物芸人が離れていく可能性はありますし、大きく稼ぐ夢を見せることも出来ません。
それに自分で取ってきた仕事(吉本興業の企画・制作でない)なら、わざわざ闇営業をしなくても本人の収入になるはずです。
収入の少ない若手芸人にとっても、同じ理由で会社を通さない言い訳にはならないでしょう。
それでも闇営業をする理由の1つは、税金逃れです。
宮迫博之さんは100万円の報酬を受け取ったそうですが、もし吉本興業を通して全額個人の収入になったとしても、所得税等で50万円くらいの手取りしかありません。
だから、全額ポケットマネーに出来てしまう闇営業についつい走ってしまう気持ちは分からなくもないですが、これは吉本興業の落ち度とはいえないですよね。
マネジメント契約の書面がないことが問題
今回の吉本興業側の問題点は、マネジメント契約が書面で交わされていないことだと感じました。
これは正直、吉本興業の落ち度だと思います。
自分の報酬が明文化されていなければ、ひょっとしたら若手芸人はこれも90%取られるかもと思うかも知れません。今回の件で受け取った最低額は3万円とのことですが、90%取られたら3千円しか残らない。しかもここから税金が引かれます。だったら3万円くらいなら事務所通さなくても・・・・・・って思っても仕方ないですよね。
だから、マネジメント契約は、会社側も芸人側も守らなくてはならないことを明記し、お互い納得の上で契約を交わさないとフェアじゃないと思います。
まとめ
今回、吉本興業のギャランティの配分が90%:10%だと知って、なぜ年収の多い大御所は吉本興業と契約解消して別の芸能事務所と契約しないのか不思議でした。
ところが、調べていくうちに、売れない下積み時代を生き残り、中堅以上になった時、はじめて大きな報酬を受け取れる、いわば吉本ドリームみたいな、成功すれば大金を稼げる仕組みになっていると知りました。
いかに売れない芸人が極貧になろうが、これはこれで悪くないと思います。
ただ、問題は、いろんなリスクを知った上で納得してマネジメント契約を交わしているのかだと思います。
この問題を機に、双方納得の上で契約を交わし、よしもとのお笑いが心の底から笑えるよう解決されることを願っています。