あるお掃除屋のつぶやき

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年金以外で2,000万円の根拠と真意。本当に年金は破綻して弱者は切り捨てられるのか

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麻生財務大臣の「老後に年金以外で2,000万円必要」発言に対する野党からの批判が相次ぎ、各種メディアでも年金についてクローズアップされていますね。

この麻生財務大臣の発言、「今の少ない給料から、老後までに2,000万円も貯めろなんて無理だ!」「年金は破綻してるんじゃないのか」と不安に思った人が多かったことが、ここまで注目を集めた理由だと思います。

参議院議員選挙を間近にひかえ、野党が選挙で優位に立つための争点として年金問題を持ち出した、といった感じですね。ただこの件を追求するのは野党にとってあまり良い選択ではないのですが・・・・・・

まぁ選挙の話は置いといて、この記事では、麻生財務大臣はなぜ年金以外に2,000万円必要などと発言をしたのか、そして本当に年金は破綻弱者は切り捨てられるのかについて書いてみようと思います。

老後に2,000万円必要な根拠って?

そもそも、老後に年金の他に2,000万円必要だとする根拠はどこからきたのでしょうか。

これは金融庁の金融審議会(市場ワーキング・グループ)が6月3日に提出した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書(以下【報告書】)が根拠になっています。

だいたい年金って厚生労働省の管轄なのに、なんで金融庁の報告書がでてくるの?って疑問が出てきます。

金融庁の【報告書】の真意を探るのに、実はここがポイントです。

2017年の家計調査の結果が根拠

【報告書】の真意はとりあえず置いといて、まずは2,000万円の根拠です。

この【報告書】の8ページから記載されている「ア.平均的収入・支出」の項目の中に、総務省の家計調査(2017年)を元に厚生労働省が作成した「高齢夫婦無職世帯の収入・支出」の資料があります。(下の画像は【報告書】配付資料の「厚生労働省提出資料」より)

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この資料を元に【報告書】ではp16に以下の文言が刻まれています。

(2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる。

出典:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 p16

ここで初めて2,000万円という数字が出てきます

ちなみに、約5万円と書かれていますが、正確には54,519円で、約1,300万円や約2,000万円という数字は54,519円を元に計算されているようです。

54,519円×12ヶ月×20年=13,084,560円≒1,300万円

54,519円×12ヶ月×30年=19,626,840円 ≒2,000万円

不足額は自分の金融資産(蓄え)から取り崩すことになるので、まぁ30年生きるとして、年金にプラスして金融資産が2,000万円は必要だという数字が出てきます。

いやぁ~ものすごい単純計算ですね。

2018年の家計調査では1,500万円になる 

ところで、政府発表の統計データは当てにならないなぁって思った事例を一つ。

実は、2,000万円の根拠となった収入と支出の不足額(54,519円)は2017年の家計調査の数字でしたが、今、総務省では2018年の最新データが出てきています。

最新2018年の家計調査では41,872円

なんと、1年間で12,647円も減っています

同じように30年間で計算すると、 

41,872円×12ヶ月×30年=15,073,920円 ≒1,500万円

つまり、老後への蓄えは2,000万円ではなく1,500万円で良いという計算になります。

おいおい、たった1年で500万円も減るのかよ!(正確には4,552,920円)って思いますよね。

さすがに僕も調べてて、こんなに違うんかよっ!って思いました(^_^;)

ただ、実は、老後に必要なお金が2,000万円だろうが1,500万円だろうが、【報告書】の真意からすると、どちらでも良かったんです。

人それぞれ状況が違うことは【報告書】にも記述されている

なぜ、老後に必要なお金がどちらでも良かったかというと、【報告書】では人それぞれ状況が違うことは分かっていたからです。

先ほどの「高齢夫婦無職世帯の収入・支出」は、あくまでも統計データなので、万人に共通するものではありません

特に住居費の13,656円は、持ち家の人も含まれているので、賃貸マンションにお住まいの方にはちょっと無理な数字ですし、逆にそれ以外の項目で25万円ほどの支出は少し多いような気もします。

そもそも年金で20万円ももらえる人は、そこそこの収入があって、年金もしっかりと納めていないとなかなかもらえません。

もちろん市場ワーキング・グループのメンバーの方も2,000万円が一人歩きしないように配慮された記述が【報告書】の中にもチラホラでてきます。

 

前述のとおり、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。

出典:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 p21

 

このようにライフスタイルが多様化する中では、個々人のニーズは様々であり、大学卒業、新卒採用、結婚・出産、住宅購入、定年まで一つの会社に勤め上げ、退職後は退職金と年金で収入を賄い、三世帯同居で老後生活を営む、というこれまでの標準的なライフプランというものは多くの者にとって今後はほとんどあてはまらないかもしれない。今後は自らがどのようなライフプランを想定するのか、そのライフプランに伴う収支や資産はどの程度になるのか、個々人は自分自身の状況を「見える化」した上で対応を考えていく必要があるといえる。

出典:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 p24

ここでご紹介したほかにも、あくまでも2,000万円という数字は仮の数字であるという旨の記述がでてきます。

それもそのはず。市場ワーキング・グループの論点(真意)は年金に対する危機感を煽ることではないからです。

麻生財務大臣の発言の問題点

それなのに麻生大臣の発言は、あくまでも仮の数字である2,000万円という数字をつかって「人生100年時代になるので、年金では足りません。全ての人は2,000万円を自己責任で蓄えて下さい」と聞こえてもおかしくない内容でした。

あながち間違いではないのですが、ただでさえ老後のお金に対して不安を抱えている人が多い状況で、大金である2,000万円を蓄えろという言葉はインパクトが大きかったんですね。

だから、年金制度や老後に対して不安を増長させたという点が、非常に問題となったのです。

その結果、【報告書】の真意が伝わらず、あげくに報告書を受け取らないという馬鹿げた事態に発展してしまったのです。

市場ワーキング・グループの【報告書】の真意とは

では、市場ワーキング・グループの【報告書】の真意とは何だったのでしょうか。

この記事の冒頭で、年金を管轄している厚生労働省ではなく、金融庁主導の市場ワーキング・グループの【報告書】が根拠であることがポイントだって書きました。

結論から言うと「貯蓄から投資へ」の推進です。

僕は【報告書】の問題提起や解決への考え方自体は悪くないと思います。ただ前提として貯蓄が出来る人を対象としているので、色んな事情やハンディキャップがあって今を生きるのが精一杯の人を対象としていません。

また、現在高齢者の方が対象というよりも、20代~40代くらいをメインターゲットにしているんじゃないかなと思います。

こう書くと、弱者切り捨てのように見えるかも知れません。

でも、そこそこの手取りがあっても老後への蓄えを考えずに全部使ってしまい、定年退職後に初めて年金だけじゃ生活できずに困る(さらなる弱者を増やす)ってなことがないようにするためにも、【報告書】で示されている考え方は必要だと思います。

 

年金は破綻するか?弱者は切り捨てられるのか?

【報告書】では、現在収入が安定していて貯蓄(or投資)の出来る人で、アリとキリギリスのように今は良くても老後に向けて何の備えも考えないキリギリスではなくアリのように賢く生きるための提案がされていました。

では、現在、すでに何らかの理由で老後への備えが無かったり、自分の収入に不安のある人にとって、年金は破綻しているので切り捨てられるのでしょうか?

結論から言うと、NOです。

公的年金制度の役割

そもそも公的年金制度の役割高齢による稼得能力の減退を補てんし、老後生活の安定を図るものであって、全ての人が老後に年金だけで裕福に生活できるなんてことは初めから謳(うた)っていないんですね。

だからホントは、定年退職後に働かなくても裕福に生活するためには老後の蓄えをしっかりと準備する必要があります。

とはいえ、じゃあ年金だけで暮らせない人はどうしたら良いんだ!憲法第25条はどうなった!!という意見はごもっともです。

不幸にも、そんな苦しい状況になった方のために生活保護制度があります。

厚生労働大臣が定める最低生活費よりも、年金などの収入が下回る場合は、その不足額が生活保護として支給されます。

実際、生活保護の受給者の半数以上が高齢者(65歳以上)です。

つまり、弱者は切り捨てられているわけでは無いんですね。

老後に生活保護を受ける人を減らす提案

年金だけでは収入が足りない人でも、生活保護制度を活用すれば裕福ではないにせよ、生きていくことが出来ます。

ところが、生活保護はイメージが悪い

まるで人生の落伍者のような、国のお荷物のような、ズルをしているような。生活保護を受給するとなると、なんかそんなマイナスのイメージがありますよね。

でも、生活保護制度は新しいビジネスに果敢に挑戦して失敗した人予期せぬ不幸な状況に陥ってしまった人を支援し自立を促す制度です。最低限の生活保障を国が用意しているからこそ、不確かな未来に挑戦できる。 

過去の記事でも書きましたが、生活保護制度は人生を前向きに生きるための制度だと考えています。

とはいえ、財源は無限にあるわけではありません。生活保護の受給者が増えると、今度は生活保護制度自体の基盤が揺らぐことになります。

だからこそ、不正受給を排除するとともに、老後の生活保護が必要な人を減らす努力を社会全体でしなければならないと思います。

防げる失敗を未然に防ぐために、現在有効な方法を提示し、幸せな老後のための提案の一つが市場ワーキング・グループの【報告書】だったのです。

【報告書】の推奨する老後に向けた考え方

では、具体的にどのようにすれば老後に備えることができるかですが、【報告書】での考え方と資産形成方法についてご紹介します。

まずは、考え方です。4つの基本的な考え方があります。

  1. 長寿化にともない、計画的な長期の資産形成・管理が重要である。
  2. ライフスタイルの多様化から自分なりのライフプラン(年齢ごとに収入と支出と資産形成をあらかじめ計画すること)を立てて、現在の収支と資産・負債を見える化することが必要である。
  3. 老後に思い描くライフスタイルに応じて、公的年金で足りない部分は自分で補うという「自助」の充実の必要性を認識する。
  4. 年齢を重ねるにつれ、誰でも認知・判断力が低下する可能性を考え、それを回避するための備えを事前に用意し適切な対応をとる。

以上のように【報告書】では、考え方をわざわざ4つに分けていますが、僕からすると1~3は統合しても良い気がします。

要は、自分なりにどんな人生を歩みたいかをお金の面からも計画し、将来的に年金も含めてお金が足りなくならないように備えようってことですね。

【報告書】の推奨する資産形成方法

次に、具体的な資産形成方法です。

20代から40代くらいまでなら、長期分散投資を薦めています。

長期分散投資とは、株式(国内・海外)と債券(国内・海外)などの投資先に対して、自分の年齢や取れるリスクに応じて投資比率(ポートフォリオ)を決めて分散し、株価の変動などで比率が変わるとリバランス(決めた投資比率に戻すこと)をしながら長期保有することです。

長期分散投資では、短期的にはマイナスになっても長期的に保有すれば収益のバラツキが少なく、絶対ではないにしろ一定のリターンが見込めるのが売りです。その収益の振れ幅も、過去の実績を参考にポートフォリオを組むとある程度リスクを管理することが出来ます。

例えば、若くてリスクがとれる場合のポートフォリオの例

  • 国内株式:30% 海外株式:50% 国内債券:10% 海外債権:10%

次に、あまりリスクをとりたくない場合のポートフォリオの例

  • 国内株式:15% 海外株式:15% 国内債券:50% 海外債権:20%

実際に公的年金が運用しているのポートフォリオ(GPIF)

  • 国内株式:25% 海外株式:25% 国内債券:35% 海外債権:25%

あくまでも例ですので、自分にあったポートフォリオを探してみて下さいね。

ちなみに、公的年金の積立金の運用を行っているGPIFは、2001年~2018年度第3四半期末現在で収益率は年平均+2.73%で、収益額は56.7兆円にも上ります。

GPIFと同じポートフォリオにすれば、税金や手数料、配当金・利子の額に違いがあるので個人だと収益率は悪くなりますが、それでもだいたい同じ結果になります。

個人で長期分散投資を行う場合、個別銘柄に広く投資することはほぼ不可能なので、日経平均や世界株価に連動する投資信託などに投資することになります。その時、最も収益率に影響するのが、税金と投資信託の手数料(販売手数料や信託報酬等)です。

税金と手数料を最小化する方法

税金と投資信託の手数料をできるだけ小さくする方法が、市場に左右されることなく収益率を上げる方法です。

税金の対策として【報告書】では、iDeCo積立NISAを推しています。

これらは「貯蓄から投資への推進」のために、将来への備えのための投資に対して税金を優遇する制度のことです。

ぶっちゃけ、かなりお得です。

 iDeCoは、20歳から60歳未満の人が拠出可能で年間14.4万円~81.6万円まで掛け金が全額所得控除され、運用益が課税されず受給時の公的年金等が控除されます。ただし、あくまで年金という特性があるので、途中の引き出しは原則不可です。

積立NISAは、20歳以上だれでも拠出可能で、年間40万円を上限に2037年まで運用益が非課税になります。こちらは途中引き出しは可能です。

【報告書】では、自分の投資できる額にあわせて、この2つを組み合わせることを推奨しています。

また、手数料を抑えるためには、ノーロード型投資信託ETFなど、販売手数料が無料か少額で、信託報酬が安いものを薦めています。投資信託は、ピンからキリまでありますので、長期保有する場合は手数料を調べ他のファンドと比較してからにして下さいね。 

まとめ

この記事では、年金以外で2,000万円必要という麻生財務大臣の発言について、僕なりに調べて書かせていただきました。

まず、公的年金制度はすでに破綻しているというよりも、もともと万人の生活を保障する制度ではなく、老後生活の安定を図るため、収入の基盤となるものでした。もし、老後に年金を含めて必要最低限以下の収入しかない場合、セーフティネットとして生活保護制度があります。

生活保護制度が破綻しない限り、年金が足りなくて生きていけない人はいないでしょう。

また、自分の思い描く老後の生活を手に入れるために、早いうちに自分に合ったマネープランを作り、iDeCoや積立NISAなどの制度を活用しながら資産形成を行い、年金だけに頼らない自分なりの方法を確立して下さい。

やっぱり、老後も幸せに暮らしていくためにはどうしたら良いか、自分の頭で考え、自分の意思で行動するにこしたことはありません。

無責任な報道等に踊らされることなく、また、不利な投資案件にだまされることなく、素敵な老後を手に入れて下さいね。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。