所得隠しとして東京国税局から告発されたスーパーの事件が報道されました。
東京都や神奈川県でスーパー「食品館あおば」を展開する「ビック・ライズ」(横浜市)の元役員2人が、人件費などを架空計上して3億円以上の裏金を捻出し、個人の生活費などに充てていたことがわかった。
この手口が、僕にとって他人ごとではないので記しておきます。
架空業者に架空従業員
今回の事件では、
- 知人の名義を借りて業務をしていない架空従業員として登録し、給与を得ていた。
- 架空の業者(運送業・内装工事業)に対して費用を計上させて、自分の口座に還元していた。
この2つの手口が使われました。
同じ経営者という立場としても憤る話なのですが、それ以上に、恥ずかしい話、実はウチの会社でも過去に同様の横領事件があったのです。
ウチの会社での事例1:架空の従業員
僕が経営しているお掃除屋というのは、とにかく売上のわりに従業員さんが多いのです。特に日常清掃でお客さんのところへ直行直帰する従業員さんをひとりひとり管理するのは難しく、現場の所属長が管理しています。
そんな状況の中、4人の現場を5人、ひどいところだと6人で雇用したことにして報告。1~2人分の給与を名義を貸していた方と7:3で自分のポケットに入れていたという事例があったのです。
30年前の話です。
当時の給料は、先代社長(祖父)の思い入れが強く、振込が一般的になっても給料は所属長が従業員さんに手渡しをする風習がありました。お給料の手渡しを儀式化することで、仕事の価値や重みを感じてもらいたいという先代の思いでした。
先代の思いを踏みにじる行為ですが、こうした事件を未然に防ぐのも経営者の務めと言われればそれまで。事件発覚後、すぐに給料の振込の体制を整え、防止策がとられました。
現在では、入社時の本人確認や誓約書・保証人の書類等の厳格化を行っており、出勤簿の管理も徹底しておりますが、昔はおおらかな時代だったのでしょうね。。。
架空発注のワックス間の山
次に架空業者への事件ですが、これも架空従業員を行っていた元社員がやってました。
こちらは、現場のワックスがけを行うときに、必要以上のワックスを発注し、現物を転売するという手法でした。手口としては単純な横流しです。
今のような経理システムがしっかりした時代とは違い、過去は手書きの帳簿記帳、小さな会社であれば証憑もどうにでもなったのでしょう。
ワックス1缶は1万円前後なので、毎月1缶横流しするだけで1万円の儲け。
いちいちどの現場でどのくらいのワックス缶を使ったのかまでを完璧に把握しチェックするのは人的なコストがかかります。
単純ではありますが、なかなかうまいやり方ですかね。
事件が発覚したのは、調子に乗ってありえないワックスを発注して、物品担当者が不審に思ったからなのがダメだったのですが、少量で我慢していたら発覚はもっと遅れていたかもしれません。
企業は横領した社員を刑事告発できるか
さて。結局、30年前の事件では、事件を起こした元社員は夜逃げしてしまい、ウチとして何もできずじまいでした。ですが、僕がもし当時の経営者だったら刑事告発したかといえば頭を悩ませます。
大手だと知名度もあり、特に上場企業は会計監査も厳しく難しいでしょうが、ウチのような中小企業ではなかなか刑事告発は難しいと感じています。
ますは、イメージの問題。
やはり、横領は会社の不始末。刑事事件となるとマスコミにも取り上げられる可能性もあり、マイナスなイメージを出してしまいます。
次に、お金と労力の問題。
告発を行うのもお金と時間がかかります。裁判所は、法に従い秩序を守るために裁判を行うのであって、どちらかが正しいと色をつけるために行われるのではありません。判決が下っても、実際にお金が返ってくるかの保証もありません。リスクが大きいのです。
他人に迷惑をかけているのであれば責任を取らなければなりませんが、不祥事を犯した社員を追い込んだのは、会社のシステムにも問題があったからです。自社のお金であれば、穏便に示談で済ませる場合が多いのではないでしょうか。
ウチも現在は無いと信じてますし、チェックもしているつもりですが、今回の事件は、明日は我が身として教訓にしていきたいと改めて思いました。