「保育園落ちた日本死ね」と題するブログが国会に取り上げられ、物議をかもしましたね。僕も認可保育園の話をこのブログで書いた後だっただけに、とても興味がわきました。
お掃除屋としては、認可保育園が増え、待機児童問題がなくなることによって潜在的なお掃除屋で働く方の数が増え、大変喜ばしいことです。
なので、今回の騒動をきっかけとして、本気で待機児童問題への対策を行っていただきたいと強く思います。ひょっとすると、この夏の参議院選挙(衆議院選挙も?)の争点になるかも知れませんね。
けれど、どうにかしろって言われたからコトはそう単純ではありません。
前回は認可保育園がなぜ増えないかについて、どちらかといえば保育園を経営する立場から書きましたが、今回は、政治(特に地方自治体)の問題を書いてみたいと思います。
政治の問題
以前、認定保育園の増えない理由の一つに、40歳未満の比較的に若い層の投票率の低さを挙げました。票につながらないので、老後の年金問題や介護問題に比べ、子育て支援は後回しになり易いという具合です。
とはいえ、少子化問題は深刻かつ重要な案件なので、政府が何もしていないというわけではありません。与党である自民党のマニフェスト(自民党重点政策2014)にも、少子化対策や待機児童の問題についてしっかり記載されています。
<すべての女性が輝く社会の実現を> ・「待機児童解消加速プラン」を展開し、保育需要のピークを迎える平成29年度末までに約40万人分の保育の受け皿を確保し、待機児童解消を目指します。(管理人注:15項目目)
引用元: 自民党重点政策2014【PDF】
また、内閣府でも子ども子育て本部を立ち上げ、対策を行っています。
とまぁ、何もやっていないわけではないんですね。
では、なぜ待機児童はなくならないのでしょう。
法整備が効果を発揮するのに時間がかかる
法整備を行ったからといって、効果が出るには時間がかかります。
待機児童問題に関する法整備でできることといえば、認定保育園の規制を下げることと、財源を獲得して認定保育園側や預ける個人に対して補助金を出すことくらいです。
認定保育園の数が少ない問題を解決するためには、保育園自体を増やすか、今ある保育園の面積を広げるしかありません。
そうなると、保育園側としても、初期費用を用意して、建築・改築して、保育士を確保して・・・とやるべきことは山積みです。
それに加えて、国が法整備を行っても、実際に保育園を管轄する自治体の条例もあわせて改正しなければならないので、時間がかかるんですよね。
国と地方自治体との関係
国が認定保育園の数を増やせ!っといっても、実際に動くのは保育園を管轄するのは地方自治体です。都道府県や市町村などの地方自治体が国と足並みをそろえて認定保育園の数を増やす努力をしないと、仮に保育園を営む意思のある事業者がいたとしても、保育園の数が増えません。
ところが、子どもの命を預かるため、保育園にかかる規制が厳しいのが現状です。
前回の記事でも、保育園の事業者が継続的に事業を行うためには適正な利益を上げる必要があるが、今の基準が厳しすぎて難しいと書きました。また、経済的な理由以外にも、自治体によっては一定数の保育園以外は認めないところもあるようです。
国をあげて待機児童の問題に取り組んでも、自治体の首長が乗り気ではなかったら、その地域では認定保育園の数が増えません。
なぜ、自治体は認定保育園の数を増やしたがらないのでしょうか。
責任を取りたくないが実績が欲しい自治体のホンネ
地方分権の考え方から、地方自治において国よりも直接管理監督を行う地方自治体(都道府県・市町村)の権限が強い分野があります。保育園の規制も同様です。
自治体の規模にもよりますが、国で予算を組んでも、自治体の予算がなければ上手くは進みません。保育園の設立にかかる費用は国が補助しても、保育園を実際に管理監督する部門やそこで働く人件費などは地方自治体が負担します。
また、極力、責任を取りたくないのがお役所です。
後で問題を起こすリスクを背負って抜本的な改革を行うよりも、派手さはなくても大きな問題を起こさない方が、公務員として評価されるからです。
保育園の数の問題では、規制を緩めて大きな事故を起こされるよりも、今ある保育園の数を適正に管理しながら少しずつ増やす方が好まれます。
これは何もおかしな考え方ではなく、安全性と公平性の観点から考えると妥当だなって思います。
でもそれだと改善のスピードが遅くなります。
公平性の担保が問題
スピードが遅くなる理由の一つに、公平性に対する責任を回避するために、さまざまな施策がとられます。
例えば、待機児童問題を解決するにあたって、「待機児童の問題解決のための市民会議」みたいな会議が開かれ、民間から地元の大学教授や関連する各種団体などの有識者を集められます。また、「待機児童にかかわる市民アンケート」などが実施されます。
この結果をもとに、待機児童の問題にかかわる条例の策定や実際の動きに反映されます。
そりゃ、スピードも遅くなりますよね。
自治体のトップが、「今年中に5つ以上の保育園を増やせ」といえば早いのかもしれませんが、それにも予算が必要なので、市議会等で予算審議を行う前に予算取りして可決されなければなりません。その時に、他の重要施策の予算との比較で反対する議員にも、しっかりと説明をするだけの準備が必要です。
まぁ、こんな感じで国で決定されたことが実際に自分の暮らしに反映されるまでに時間がかかるってわけです。このあたりが、僕の考える政治の問題かなぁて思います。
次は、子どもを保育園に預ける側の問題を取り上げてみたいと思います。